糖尿病の食事療法

  • 糖尿内科

糖尿病に関するお話しの5話目です。

今回は、治療に関してお話します。

糖尿病の治療には、食事療法運動療法薬物療法の3つの方法があり、各々の方に合った方法を組み合わせて治療していきます。

最初は、食事療法です。これは、全ての患者さんに当てはまる治療方法です。

さらに言えば、糖尿病でない人にとっても健康増進のためによい食事といえます。

【食事療法】

原則として、以下の項目が挙げられます。

  • 食べる量を適正に。(食べ過ぎない。)
  • バランスよく食べる。(偏食をしない。)
  • 規則正しい食生活を送る。(食事回数や食事時間を守る。)

 

各々の方に適正な食事量とは・・・

1日の適正なエネルギー量は、身長から求められる標準体重と身体活動量より求められます。

標準体重は、その人が最も病気になりにくいといわれる体重です。下記の計算式により求められます。

 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

例)身長160cmの人では、

 1.60(m)×1.60(m)×22=56.3(kg)

身体活動量とは、体を動かすことで消費されるエネルギー量のことをいいます。

上記で求めた標準体重1kgあたりに、下記の身体活動量をかけたものが、基本的な必要エネルギー量です。

 

表1 標準体重1kgあたりの身体活動量の目安

軽労作(デスクワーク主体、主婦など) 25~30kcal
普通の労作(立ち作業が多い職業 30~35kcal
重い労作(力仕事の多い職業) 35kcal~

(糖尿病治療のエッセンスより抜粋)

日本糖尿病対策推進会議:文光堂

 

では、具体例を示します。

身長160cmでデスクワーク中心の仕事の人の場合

まず標準体重を求めます。

 1.60(m)×1.60(m)×22=56.3kg (標準体重)

そして、標準体重に身体活動量をかけます。

 56.3 (標準体重)×27.5 (身体活動量) =1548kcal (適正なエネルギー量)(約1600kcal)

これが、その方が1日に適正なエネルギー量となります。

実際には、年齢や性別、肥満かどうかなどを考慮し、先生と相談し決めていくことになります。

 

次に、バランスよく食べるとは・・・

栄養素のことを知ることが大切です。

炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスよくとることが健康のためによい食事といえます。栄養素のそれぞれの働きについて見てみましょう。

 

表2 栄養素とその働き

炭水化物 エネルギーの源。
タンパク質 筋肉や皮膚、臓器など人体の構成部分。エネルギーの源でもある。
脂質 エネルギーの源。ホルモンなどを作っている。
ビタミン 身体の働きを正常に保つために必要。
ミネラル 骨や歯などの材料。身体の働きを正常に保つために必要。

 

また、一般的には、全体のエネルギー量の50~60%を炭水化物、標準体重1kgあたり1.0~1.2gのタンパク質、残りを脂質でとるのが目安と言われています。どの食品が炭水化物で、どれくらい食べればどのぐらいの量が含まれているか?といったことをおおまかでいいから知る必要があります。少し難しいと思われるかもしれません。しかし、食品交換表(日本糖尿病学会編、文光堂)などを用いると判りやすいと思います。当院では、食品サンプル(模型)などを用いて説明しています。

 

規則正しい食生活を送るとは・・・

理想は1日の必要なエネルギー量を3等分して朝・昼・夕に食べることです。

食事をとると、当然血糖値は上がります。血糖値が下がりきらないうちに間食を摂るとさらに血糖は上がりますので、食事と食事の間は適度に時間をおくことが大切です。

また、朝食の欠食や、夜遅くにとる夕食も注意が必要です。夜遅くに夕食をとると肥満になりやすく、血糖コントロールも困難になりがちで、合併症も進行しやすいという報告もあります。1) しかし、仕事の為に飲食時間や食事内容など仕方のない部分もあり、出来る限りの方法を話し合い模索しながらより治療していくように心がけています。

 

他にも、食事に関してよく質問されるのは、

何かを食べると体に良いの?ということです。

私自身、何かを食べて血糖が下がる食品はこれだ。と断言はしかねます。

しかし、繊維質の多く含まれている食品が食後の血糖の上昇を緩やかにすることは多くの報告で言われており、確かであると思います。血糖の上昇が緩やかであれば、血糖を下げるホルモンのインスリンの上昇も緩やかになりなかなかよいのではと思います。その為、食事の最初に野菜を摂る方法はよいと思います。

 

この項の最後に

日本人の糖尿病患者数が増えている背景には食生活の欧米化が大いに関係していると思われます。我々日本人の体形や嗜好の変化もあるのでしょうが、魚や野菜をうまく取り入れた昔ながらの和食の良さを見直すのもよいのかもしれません。

 

  • 1) Morse SA et al Diabetes Care29 1800-1804 2006

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